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2003年04月06日

札の辻・21

 山深い田舎育ちの身にとって、舌に感じる春一番はタケノコである。そして春二番はワラビ、三番はウドであろうか。
 3月下旬からおよそ1カ月にわたって出回るのが孟宗竹のタケノコで、真竹や淡竹は少し遅れて5月となる。
 子供の頃、ヤマザクラが咲きはじめると、ほの暗い孟宗の竹薮に入り、竹の落葉が敷きつもった土から、黄みどり色の先端をのぞかせたタケノコの頭を見つけ心を躍らせたものである。
 孟宗竹は中国の江南地方が原産で、江戸時代中期に琉球を経由して薩摩に渡来し、やがて東北地方にまでひろがった。揚子江南部に多いので江南竹の呼称もあるが、病床の母のために、雪の下からタケノコを掘ったという孝子孟宗の名から孟宗竹となった。
 孟宗竹のタケノコには白子と黒子の区別がある。東京周辺の関東ローム層のような地質には黒子が多く、京都の嵯峨や大原のように赤土で育つのが白子である。白子は見た目にもよく、やわらかで甘味をもつ。その十二単衣にも似た皮を1枚1枚はがし、タケノコを素っ裸にすると、秋田美人の肌を思わせるような魅力があると、ある作家は述べているが、不幸にして秋田美人の肌にお目にかかっていない。
 タケノコの味覚は時間との勝負である。朝掘りのまだ土の着いているものはゆでる必要がない。タケノコとトウモロコシは、とれたてに近いほど生きた香りを伝えてくれる。
 この春はまだうすら寒い彼岸に、友人から小ぶりだがとれたてのタケノコが届き、惜しみなく舌に春が躍った。
(鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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