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2003年05月04日

札の辻・21

 先日、往年の松竹映画「集金旅行」を観た。1957年(昭和32)製作、今から46年前の作品である。
 ストーリーは、異なった目的をもつ若い二人の男女が繰り広げる珍道中もので、お互いに喧嘩しながらも次第に惹かれ合ってゆく過程を、ローカル色ゆたかにユーモアを交えながら描き出していた。
 主演は佐田啓二と岡田茉莉子で助演の伊藤雄之助、中村是好、トニー谷、澤村貞子といった芸達者たちが脇を固める。
 感心したのは脇役陣が各地方の方言をうまく使いこなしていることだ。
 伊藤雄之助の岩国市教育委員、市村俊幸の山口市議会議員とその夫人である澤村貞子、萩市の産婦人科医トニー谷とキャバレーの女性たちがしゃべる方言のイントネーションに違和感がない。
 まだテレビの普及していない時代のことで、現在のテレビドラマや映画には失われた方言を感じるものが多いが、あの頃の役者たちは、いかに方言を消化しているかも芸のひとつであった。
 そして、「男なら」、「安来節」、「阿波踊り」と行く先々の唄と踊りを、風景とともに大型スクリーンいっぱいに見せるカメラワークにも迫力があった。
 山口市では早間田界わい、焼失前のサビエル記念聖堂、まだ公園化前の五重の塔などがなつかしく、またカルスト大地を展望する岡田茉莉子が若くて美しい。
 佐田啓二ほか出演者の大半と、原作の井伏鱒二氏もすでに鬼籍にある。
 あの頃、東海道本線・山陽本線には、車窓に田園や海の風景をもつ汽車があった。(鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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