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2003年05月11日

札の辻・21

 「五月の軍旗」という中原中也の訳したランボーの詩がある。
 菩提樹の明るい枝に
 鹿笛の音は息絶える。
 しかし
 意力のある歌は
 すぐりの白い花に
 舞いめぐる。
 血が血管で微笑めば
 空と天使は美しく
 聖 拝受。
 聖五月、五月祭と、聖母マリアや花の女神フローラに寄せるイベントが、世界各地で新緑の5月をいろどる。
 東京では神田祭りや浅草三社祭りの神輿が薫風の中ではずむ。
 冬の間すべての葉を落としていた裸木が、春、アメ色の芽を吹き出すのは、ランボーの「血が血管で微笑む」という言葉のごとく、神につながる季節の生命力であろう。
 いま県立美術館前のケヤキ並木を歩くと、青葉の鼓動が伝わってくるような気持ちになる。ここ数年たくましく根太くなった幹が並列し、盛り上がり重なり合った緑の塊がつづく。
 先日ある集まりで、山口市里山自然誌の会の三宅貞敏さんから、「残したい巨樹・名樹50選」の解説を聞いた。そのうちまだ見ていない宮野龍王社のムクノキ巨樹群、大内長野にある通称シャシャンボ(アカヅラ・シドノキ)、上小鯖洞海寺のカヤなどをたずねたいと思っている。
 「男は一本の木と、一軒の家と、一人の息子を持たねばならぬ」という戯曲があった。論旨の可否は別として、8世紀ごろに建立された世界最大の木造建築、奈良東大寺の大仏殿をみるとき、日本文化はひとつには樹の命に支えられてきたと思う。 (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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