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2003年09月07日

札の辻・21

 雲の動きが秋のシフトを見せてきた。
 空はそれぞれの季節に雲の表情を変化させる。
 春は綿の如く、夏は岩の如く、秋は砂の如く、冬は鉛の如くと俳人正岡子規は表現した。
 秋晴れという言葉から受ける体感は、他の季節とは格別なものがある。9月は大陸性高気圧が日本列島に張り出してくる時で、天高く澄みわたり夏季に比べて陽差しは弱く、空気は乾燥してすがすがしい。さらに大規模の移動性高気圧が通過するようになれば、紺青の秋天が初冬へとつづく。
 秋空に小さく白い雲が連なるようにひろがる姿が、イワシの群れを思わせることからイワシ雲といい、また、秋サバの背にある斑文にも似て、雲が点々と並ぶのでサバ雲とも呼ぶ。
 イギリスではこうした雲の現象を、マッカレル・スカイというが、マッカレルとは英語でサバのことである。
 イワシ雲は気象用語では緝積雲である。この雲が出現すると移動性高気圧の通過が早くなって、西から低気圧が近づき天気は下り坂となる。
 雲に寄せる大木淳夫の詩「別盃の歌」がある。
 熱き血を捧ぐる者の
 大いなる胸を叩けよ
 満月を盃に碎きて
 しばし ただ醉いて
 勢へよ
 かがやかし南十字を
 いつの夜かまた共に
 見ん
 言うなかれ君よ別れを
 見よ空と水うつところ
 黙々と雲はゆき
 雲は行けるを
 雲は思索を与えてくれる。われわれの世代は青春が「雲の墓標」の間近にあった。(鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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