2004年03月21日
札の辻・21
今年のサクラは駆け足で咲く。大寒前後に暖かい日があり蕾は早くから大きくふくらみを見せていたから。
季節風の交代する春は、北寄りの風と南寄りの風が日本列島付近で入り乱れて衝突すると低気圧が発生する。春の天候の変わり早さを表現した季語に、「涅槃西風」「春一番」「桜まじ」がある。桜まじとはサクラの開花時期に強く吹く南風のことである。
植物の発芽、開花、紅葉、落葉などの期日を地図上に記入し、等期日線を引くと、各々の移動日がわかる。とくに花の等期日線を、気象前線になぞらえたものが、菜の花やサクラ前線である。
「花は里より咲き始め、紅葉は山より染める」の古い言葉があるように、春の花前線は南から北へ、山麓から山頂へと進み、すでに南の地方では開花がはじまり、北上速度は平均時速25キロというから、山口にも間もなく到達する。
サクラは日本の花といわれてきた。農耕生活が主体であった萬葉人は農作業の開始にあたっては、その時期に咲くヤマザクラの花姿を見て稲の実りを占い、これを祠に供えて山の神を迎えた。
東北地方では残雪の中で今も行われている伝承である。
サクラの花には幻想を誘うものがある。花の下は空虚で、満開の静寂さには鬼気すら感じたという坂口安吾に「桜の森の満開の下」の短編がある。彼がサクラに恐怖空間を想ったのは、戦争末期の焦土の町に見た満開のサクラの異様の姿であったという。
ともあれ一ノ坂川の河畔で、サクラ色の風に吹かれたい。(鱧)
季節風の交代する春は、北寄りの風と南寄りの風が日本列島付近で入り乱れて衝突すると低気圧が発生する。春の天候の変わり早さを表現した季語に、「涅槃西風」「春一番」「桜まじ」がある。桜まじとはサクラの開花時期に強く吹く南風のことである。
植物の発芽、開花、紅葉、落葉などの期日を地図上に記入し、等期日線を引くと、各々の移動日がわかる。とくに花の等期日線を、気象前線になぞらえたものが、菜の花やサクラ前線である。
「花は里より咲き始め、紅葉は山より染める」の古い言葉があるように、春の花前線は南から北へ、山麓から山頂へと進み、すでに南の地方では開花がはじまり、北上速度は平均時速25キロというから、山口にも間もなく到達する。
サクラは日本の花といわれてきた。農耕生活が主体であった萬葉人は農作業の開始にあたっては、その時期に咲くヤマザクラの花姿を見て稲の実りを占い、これを祠に供えて山の神を迎えた。
東北地方では残雪の中で今も行われている伝承である。
サクラの花には幻想を誘うものがある。花の下は空虚で、満開の静寂さには鬼気すら感じたという坂口安吾に「桜の森の満開の下」の短編がある。彼がサクラに恐怖空間を想ったのは、戦争末期の焦土の町に見た満開のサクラの異様の姿であったという。
ともあれ一ノ坂川の河畔で、サクラ色の風に吹かれたい。(鱧)
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
│札の辻