アクセスカウンタ
QRコード
QRCODE
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 87人

店長情報 トップページ
店長情報

2005年03月13日

札の辻・21

 椹野川の冬鳥の姿が日毎に少なくなってきた。3月になると、秋・冬を日本列島で過ごした渡り鳥の旅立ちがつづく。
 渡り鳥には夏鳥と冬鳥の区別がある。夏鳥は春になると南の国から飛来するツバメやホトトギスで、ナベヅル、カモ、ガンなどは秋に来る冬鳥である。冬鳥にはツグミ、ヒワなど小鳥もいて種類はきわめて多い。このほかの渡り鳥ではシギやチドリが春秋の2回に姿を見せるから候鳥と呼ぶ。
 俳句歳時記にはいま頃の季語に「雁風呂」がある。津軽の外ケ浜では雁が北国へ帰って行ったあと、海岸に落ちている木の小枝をひろいあつめ、風呂を立てて雁の供養をするという風習があった。秋になり雁が日本海を渡って来るとき、小枝を口にくわえて飛びつづけ疲れると枝を海に浮かべて羽根を休め、本土に到着すれば枝は海辺に落としてゆく。翌春、雁は帰るとき再びその小枝をくわえてゆくが、若し残った枝があれば、そのぶんだけ雁は日本で死んだものとされ、村人はそれを哀れみ雁風呂にして供養するというもので、民話的な伝説のおもしろさから、「雁の別れ」とともに季語となっている。
 雁にまつわる小説をふたつ思い出す。
 ひとつは森鴎外の名作「雁」で、囲われ者である女性が、ひそかに大学生に惹かれるが不遇な青春の残像に終わるという筋であった。いまひとつは水上勉の「雁の寺」である。京都の寺院での水上自身の体験をもとに修行僧の屈折した青春を寺にある雁の襖絵で結んでいる。
 雁だけでなく冬鳥の北帰行には、そこはかとなく旅愁が漂う。                     (鱧)


同じカテゴリー(札の辻)の記事画像
札の辻・21
同じカテゴリー(札の辻)の記事
 札の辻・21 (2016-07-30 00:00)
 札の辻・21 (2016-07-23 00:00)
 札の辻・21 (2016-07-16 00:00)
 札の辻・21 (2016-07-09 00:00)
 札の辻・21 (2016-07-02 00:00)
 札の辻・21 (2016-06-25 00:00)
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。