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2005年06月12日

札の辻・21

 「風に吹かれて」というのが私の生きてきたスタイルである。「風に抗して」でもなく「風を起して」でもない。「百寺巡礼」の旅もそんな風にして始まった。---
 という五木寛之の「百寺巡礼展」を小倉井筒屋で観て、北九州芸術劇場で氏の記念講演を聴く。
 展示ホールでは室生寺、永平寺、淨瑠璃寺など奈良・北陸・京都を代表する古刹の写真や寺宝が紹介されていた。
 印象に残った寺はまず長谷寺である。「源氏物語」や「枕草子」、「更級日記」で知られるが、四季を通して境内が花に埋もれる「花の寺」でもある。とくに春は6500本もあるソメイヨシノとヤマザクラが繚乱と咲き、冥界への入口とされ生と死が交わる聖地であると写真は説明する。
 12年もの歳月をかけて苦闘に苦闘を重ねながら唐から渡来した鑑真和上の像があるのは奈良の唐招提寺である。国宝の坐像は763年作で、わが国最古の肖像彫刻として存命中に制作された。まさに煩悩を昇華させた滋顔だった。
 今回の企画には含まれていないが講談社版の「百寺巡礼」山陰・山陽編には山口の瑠璃光寺が登場する。
 昨年9月8日、台風18号の翌日に瑠璃光寺を訪れた五木氏は、五重塔を見て「200年にわたって栄えた大内文化の力そのものだ。そう思いあたったときこの塔が持っている“強さの美”というものが納得できた」と書いている。
 講演の最後に氏は「ため息を吐きながら思い出をかみしめつつ、無数の声に励まされ、黙々と巡礼の旅を続ける」と結んだ。
         (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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