2005年06月19日
札の辻・21
山口盆地にホタルの季節がおとずれた。
初夏の水辺の宵闇を飛び交うホタルには、腹部に複雑な発光器官があって冷たい光を発する。それが神秘的であることから、京都は宇治川の怨霊螢合戦のようにいくつかの伝説も存在する。
国の天然記念物目録によると、山口市がゲンジボタル発生地の指定をうけたのは昭和10年12月24日である。その解説には「山口市の椹野川周辺では、江戸時代から旧暦4月20日(現行暦では5月末から6月はじめ)をホタルの縁日として、籠に入れているホタルを放つ風習があった。椹野川は有名な湯田温泉を流れているため、山口ゲンジボタルの名は古くから知られている」と記す。
山口と同じ日付の昭和10年12月24日に指定をうけたのは愛知県岡崎市のゲンジボタルである。市内を流れる竜泉寺川、山綱川などいずれも矢作川の支流では古くからゲンジボタルの多産地として親しまれ、これら全河川域の保護態勢ができた現在では、毎年30万匹を超すホタルの乱舞が見られるという。
芥川賞作家・宮本輝の受賞作品は「螢川」だった。富山市内を流れるいたち川のほとりで、初恋の女性と雪のように舞い降る何万という螢火を見る幻想的な妖しくも美しい情景が書かれていた。
某夜、一の坂川のホタルを見に出かけて、日没までを亀山橋の近くに開店した料理店で過ごす。
料理のチシャもみが秀逸で酒が進み、仕上げは鰻重とした。戦前からの川魚料理店の伝統が生きている味である。
昏れた河畔は水の音だけでホタルの少ない夜だった。
(鱧)
初夏の水辺の宵闇を飛び交うホタルには、腹部に複雑な発光器官があって冷たい光を発する。それが神秘的であることから、京都は宇治川の怨霊螢合戦のようにいくつかの伝説も存在する。
国の天然記念物目録によると、山口市がゲンジボタル発生地の指定をうけたのは昭和10年12月24日である。その解説には「山口市の椹野川周辺では、江戸時代から旧暦4月20日(現行暦では5月末から6月はじめ)をホタルの縁日として、籠に入れているホタルを放つ風習があった。椹野川は有名な湯田温泉を流れているため、山口ゲンジボタルの名は古くから知られている」と記す。
山口と同じ日付の昭和10年12月24日に指定をうけたのは愛知県岡崎市のゲンジボタルである。市内を流れる竜泉寺川、山綱川などいずれも矢作川の支流では古くからゲンジボタルの多産地として親しまれ、これら全河川域の保護態勢ができた現在では、毎年30万匹を超すホタルの乱舞が見られるという。
芥川賞作家・宮本輝の受賞作品は「螢川」だった。富山市内を流れるいたち川のほとりで、初恋の女性と雪のように舞い降る何万という螢火を見る幻想的な妖しくも美しい情景が書かれていた。
某夜、一の坂川のホタルを見に出かけて、日没までを亀山橋の近くに開店した料理店で過ごす。
料理のチシャもみが秀逸で酒が進み、仕上げは鰻重とした。戦前からの川魚料理店の伝統が生きている味である。
昏れた河畔は水の音だけでホタルの少ない夜だった。
(鱧)
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
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