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2005年07月24日

札の辻・21

 暑中御見舞申上候
  本年は近年稀なる
 暑さの折柄御尊堂様
 折角御自愛専一に祈
 上候。
  昭和九年盛夏
   山口市祇園
    菜 香 亭
     斎藤幸兵衛
     電話一三三番

 という暑中見舞の古い印刷ハガキを「おごうさん」こと斎藤清子さんが保存されていた。
 昭和9(1934)年は山口市史によると、干天つづきのため市内4カ所で雨乞いの千把焚を行うとあるから、ハガキにあるように酷暑の夏であったようだ。そしてその秋にはかの室戸台風が襲来している。前年の33年には5月にちまきや八木百貨店が新築落成し、翌35年2月山口市観光協会創立、5月第5代高橋市長就任と市史にあり、まだ戦争の足音は高くない時代であった。
 その頃、種田山頭火は小郡の其中庵に住んでいた。34年3月には信州伊那谷で客死した放浪の俳人井上井月の墓参を思いたち、広島、神戸、京都、名古屋と句友を訪ねながら木曽路から伊那谷を経て4月末に其中庵に帰着している。
 この年の夏は山頭火も暑さを感じたらしく、
○炎天のはてもなく蟻
 の行列
○朝からはだかでとん
 ぼがとまる
の句があり
○ふくろうはふくろう
 でわたしはわたしで
 ねむれない
もある。
 34年の暑中見舞から71年目の夏を迎えた菜香亭は往年の姿で移築保存された。秋田フキの庭と夏座敷を野田の森からの風が吹き抜ける。    (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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