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2005年08月14日

札の辻・21

 手もとに55(昭和30)年12月号の雑誌「新潮」がある。広告ページに「新潮社2百万読者の要望に応え、出版社が初めて刊行する週刊誌“週刊新潮”近日発刊・御期待を乞う」と出ている頃である。なぜこの号を保存していたか? それは新潮社が新人を発掘するため戦後初の同人雑誌推薦小説を募集し、応募作品126編の中から入選作10編を掲載したからだ。
 戦後の50年代にわれわれ東京神田で出版社などにつとめていた連中で「裸線」という詩と小説の同人誌を発行していた。時間の遅い仕事を終えて集まる喫茶店は神田の「ラドリオ」であり新宿の「風月」だった。その仲間のひとり津国裕の「歪んだ顔」が入選し、同人達の感動は絶頂に至り新宿西口に夜は更けた。作品の内容は、米軍の兵器厰に勤務するアルバイト学生と米人従軍牧師にキャンプの給与係である日本女性をからめた人間模様を書いている。
 同時掲載には後に文壇で活躍する三浦哲郎が同人誌「非常」に書いた「15歳の周囲」も入選していた。津国はその後群像などに作品を発表し期待されながら病に倒れ夭折したのは残念であった。
 また、この号には阿川弘之の「雲の墓標」最終回も載せてあり、巻末の特攻隊員の遺書「雲こそ吾が墓標、落暉こそ碑銘をかざらむ」には悲愴感がみなぎっている。
 あの頃、東京下町付近にはまだ戦災当時の姿が残る風景もあり、われわれ世代の胸中には「戦争と平和」の定義の中で、消えてゆく昭和と新しい昭和への理念が交錯する青春だった。
 明日は60回目の終戦記念日である。   (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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