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2005年09月04日

札の辻・21

 すでに終わり近くなってきたが、NHK・朝の連続ドラマ「ファイト」には、ジョンコと呼ぶ馬が度々登場し、よくカメラなれしていて表情ゆたかにドラマの脇役をはたしている。
 戦中のことだが、41年の東宝映画に「馬」という名作があった。
 山本嘉次郎脚本・監督で、当時17歳の高峰秀子が主演だった。
 東北は馬の産地盛岡地方の村で、ある農家のくらし1年を中心に、ひたむきな愛情で馬を育てる少女イネ(高峰秀子)を描くものだった。
 内容では、一家の貧窮状況や父親の怪我とか、馬の病気のため青草を求めて雪の中を探しつづけるイネの献身的な飼育ぶりが、今の「ファイト」にも通じるものがある。
 映像は東北地方の年中行事や放牧場の自然風景など田園の四季を美しく紹介し、冬の早い北国の秋祭りで、露店の並ぶ鎮守の森の参道に遊ぶ着ぶくれた子供たちも印象に残る。また出稼ぎから盆休みに帰ったイネが、久しぶりに馬と会って喜ぶ姿に「ファイト」の高校生(優)の顔が重なる。
 先日、新聞の投書欄の「ひととき」に「戦地へ送られた馬」という投書が、86歳の主婦から寄せられていた。
--私の故郷には木曽の花馬祭りがある。田ならしで泥だらけになった木曽馬も、祭りの日には小川で洗われ美しい毛並みになった。中略、戦争中は馬も徴発された。農家の男たちは駅まで馬を引き、ワレ、弾に当たって死ぬでねーぞと、ふところから黒砂糖やモチを出して食わせ、嫌がる馬を暗い貨車に乗せた--と。
 天高く馬肥ゆる秋は近い。       (鱧)



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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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