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2005年09月18日

札の辻・21

 「旅のみやげは石に限る」と題し、伊良湖岬や伊吹山など旅で拾った石には、その数だけの思い出があるという一文が新聞の投書欄にあった。
 私も旅先で小石を拾い記念にしている。県内の錦帯橋河原の石をはじめ上高地、奥入瀬峽、納沙布岬などだが、印象に深いのは沖縄の名護湾海岸で拾った砂れき化した白い珊瑚石である。
 かつて東支那海に存在した琉球王国は、日本をはじめ中国から東南アジア諸国に及ぶ交流により、首里城や琉球紅型に見られる独特の文化圏を完成させた。その名護の海は小説の題名の如く〝限りなく透明に近いブルー”だったが、シラマーと呼ぶ砂浜で得た石からはあの太平洋戦争末期に、本土防衛の犠牲となった沖縄住民の苦しみがよみがえってきた。
 ジャングルを逃げまどい、やっとたどりついた海岸は砲火の待ちうける非情な海だったことを思えば、手にした白く乾いた石が心に重かった。
 国外ではパリで無名画家たちが集うテルトル広場で拾った絵の具の付着した小石もあるが、忘れ難いひとつは、90年の初夏、NNN報道局長会で東欧を視察したとき、東西冷戦の象徴であったベルリンの壁が破壊された現場の石である。
 ポツダム見学から帰った夜、東ベルリンの暗い酒場で、その石を前に若い革命家たちから壁崩壊の裏話など聞いた。あの日はソ連軍警備隊の銃口が並び、西側TVカメラの砲列の中で重苦しい作業が行われたのだと。
 ひろってきた石たちは無言だが饒舌である。
 芭蕉は旅の野に石を抱き寂を知った。                         (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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