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2005年12月04日

札の辻・21

 所用で上京し仕事を片づけた翌日、まずは神田の古書店街を漁る。いま新潮社から出版中のものでなく、やはり同社の旧版阿川弘之全集を見つけて宅急便にする。
 ひるどきになったから河童橋はどぜうの飯田屋へ電話したところ、今日は二の酉で客がいっぱいだという。
 酉の市を最近はとりのいちという人が多くなったが、江戸の昔からまちでおトリ様とも呼ぶ。酉の市とは台東区千束にある大鳥神社の祭礼に賑わいを見せる出店のことで、同神社前から数丁に至る道に、売り声も高く福をかき集めるという縁起物の熊手や、おかめの面を売る店が立ち並び参拝客で込み合う。
 飯田屋が駄目になったので、ひる飯は久しぶりに築地の市場近くにある焼鳥丼の店「ととや」にした。作りはごくありふれた小さな店だが安くてうまい。店をとり仕切るおばあさんも元気で江戸ッ子らしくシャキッとしていた。まずビール、ここはいつもエビスビールで鳥の煮こごりが突き出しに出ることも変わりない。次は笹身の刺身をみつ葉、浅草海苔と生ワサビで。仕上げは焼鳥丼、御飯の上に濃い目のタレをつけた鳥の焼肉がびっしり、脂の浮いた白いスープと自家製の大根一夜漬けが付く。これを食べた作家の丸谷才一氏が絶句したというがうなずける。
 築地市場の帽子を被った人達がドヤドヤと入ってきたので交替する。
 昨今の築地市場は、流通機構の中抜き現象で、空洞化が進行中だということだが、「ヤキドン五ツ!」と注文した声には張りがあり、これは歳末を迎える市場男の声だと思った。     (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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