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2006年02月05日

札の辻・21

 昨日が立春だった。節分の翌日で、暦の上ではこの日から春なのだが、寒さはまだ遠くへ去っていない。
 でも日脚は伸びネコヤナギもふくらみかけ、禅寺の「立春大吉」の符札にも浅い春を感じる。
 世間話を交え滋味深い「食」の話などをする飲み仲間で、天花に住むNさんからフキノトウのミソ漬が到来した。近くで採れたものでなく南国日向産とのことだった。
 「春」はと問われ「曙(あけぼの)」と答える人はめずらしいが、幾度となく訪れてくる春に、フキノトウほど季節感を伝えるものは少ない。
 漆芸から陶芸の道に入り、生来の食いしん坊から料理を盛る食器づくりで知られる浅野陽氏は、

 ふなずし
 自然薯の包み揚煮
 いぶりがっこ
  (燻製たくあん)
 蕗のとうの煮びたし

を早春の献立にあげ、蕗のとうはむせ返るような香りとほろ苦さがいのちで、冷たい水でよく洗い吸いものより濃いめのダシ汁でさっと煮る。煮すぎると香りが逃げて色も黒くなるという。
 秋田ではフキノトウをバッキャと呼ぶ。残雪がやせてゆく頃、黒い土の中から頭を出したバッキャを摘みとるのは子供たちの仕事だ。とりたてのバッキャは米のとぎ汁でさっとゆでる。それを冷たい湧き水にさらしたあと酢ミソであえる。
 冬眠からさめたツキノワグマもいち早くバッキャを見つけ眼を細める。
 女流俳人杉田久女に句がある。
 ほろ苦き恋の味なり
 蕗のとう
         (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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