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2006年04月16日

札の辻・21

 ことしの冬は腰が重く、季語で言えば山眠るから山笑うに至るまでに、幾日か冷たい雪と風の日がつづいた。
 しかし4月に入るや空の色も、日差しもやわらかになり、2日の日曜からサクラが一挙に咲きはじめ、3日には満開に近い風情となった。
 花ニ嵐ノタトエモア
 ルゾ。サヨナラダケ
 ガ人生ダ。
そのことば通りに4日の午後には雨になって
 宵浅くふりいでし雨
 のさくらかな 万太郎
の句も浮かんだ。
 日本人のサクラに寄せる心は厚い。
 平安朝文学にも「世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」とか「見渡せば柳桜をこきまぜて都ぞ春の錦なりけり」の古歌があるように、豪華絢爛たる春の美的対象としてサクラは山に里に日本の風土を彩ってきた。
 文春新書版小川和佑著「桜の文学史」では、終戦前の数カ月を海軍特別幹部練習生に在籍した作家城山三郎について、40年代の戦中戦後に青春を送った世代には、サクラは格別の思い出があり、詩人辻井喬も作家城山三郎も例外ではなかった。若い復員学徒の文学仲間である彼等にとって、サクラは軍国の花で戦死をイメージする散華の花であった。17歳で海軍を志した城山の短編集「忘れ得ぬ翼」は同期の桜に寄せる悲痛な鎮魂歌でもあると書いている。
 その城山三郎と私は同期生である。彼は対空砲要員で私は暗号要員であった。
 散るサクラ、残るサク ラも散るサクラ。
この春も満開のサクラの花影に悲愁が漂う。         (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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