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2006年07月02日

札の辻・21

 夏をつげる魚のひとつトビウオ(飛魚)の刺身をスーパーの鮮魚コーナーで見かける。
 トビウオは山陰から九州にかけてはアゴと称し、ツバメウオなどと呼ぶ地方もあるようだが、鹿児島ではトッピーだ。
 「鹿児島で私たちは四日も船便を待った」
 これは林芙美子の小説「浮雲」の一節だが、当時の連絡船では、鹿児島港を朝の9時に出航し、屋久島に着くのは翌朝の5時であった。
 現在はトビウオの方言をつけた快速船トッピー号に乗船すると、75分で屋久島の宮の浦港に到着する。
 トビウオの飛行習性は大型魚からの逃避行動が発達したもので、尾ビレで海面を打ちつづけ空中に浮揚し羽ビレでグライダーのように滑空するから、英語でもフライング・フィッシュと言う。
 これまでの世界的な飛行記録は400㍍、滞空時間42秒、高さ10㍍と「魚と貝の辞典」に記載されている。
 トビウオは食用として利用が多く、伊豆七島では梅雨あけと共に追込漁がはじまり、伊豆特産の「くさや」に加工され、山陰地方ではアゴの野焼ちくわとして登場する。
 長崎の平戸一帯では小アゴの干物を雑煮や煮物のダシに、また酒の肴でも人気がある。
 トビウオは内臓が少なく鮮度が落ちにくい魚だから、体表に光沢があり眼が黒く澄んでいるものは、アジと同じくたたきにしてうまい。
 飛魚に波ひとつなき
 うねりかな
 この句があるように、沖釣りに行った時、水平線の入道雲を目指す如きトビウオの飛翔を見ることがある。爽快だ。
         (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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