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2006年07月23日

札の辻・21

  耳
 私の耳は貝の殻
 海のひびきを
 なつかしむ。

 ジャン・コクトーの詩だがフランス人にとってはあまり記憶され、愛されていないらしい。短歌や俳句になじむ日本人の感覚にはぴったりで、海の波音をなつかしみ、郷愁をもつことに耳を貝殻だとしたのは堀口大学の名訳である。
 三好達治詩集「測量船」にも海の詩があった。
  郷愁
 私は壁に海を聴く
 私は本を閉じる
 私は壁にもたれる
 隣りの部屋で
 二時が打つ
 海よ、遠い海よ。

 フランスの、また日本の詩人にも海は汐騒のように語りかけた。
 今日は7月23日、暦では大暑である。
 大暑は言葉の上から言っても、威圧するような炎天を感じさせ、太平洋高気圧は日本列島をつつみ、積乱雲が急速に発達したりして雷雨を呼ぶ。
 白晝の暑さを払うように風が立って、真夏の夕ぐれどきがせまる頃になると思い出す句がある。

 冷酒の氷ぐらりと
 まわりけり   實

 朝日新聞俳壇の選者で活躍された飴山實氏の句だ。飴山さんは山口大学の教授で御堀に住んで居られ、仁保川河畔の散歩でよく見かけたのだが先年亡くなられた。
 大ぶりなグラスに日本酒の冷を注ぎ、大き目の氷を落とす、氷が少し溶けると酒の中でグラリとする。そのグラスを持てば涼感がよぎる。私の場合、肴は茗荷。       (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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