2007年04月29日
札の辻・21
4月からNHK朝の連続ドラマの舞台は東北の盛岡となっている。
以前4月の中旬に盛岡を訪れたとき、めずらしいサクラを見たことがある。石割桜と呼ぶ盛岡地方裁判所の前庭にあるサクラだ。巨大な花崗岩の割れ目に成育したエドヒガンザクラで、直径1.3㍍樹齢約300年の大樹はゆるぎなく満開の花姿を見せていた。
盛岡市は人口約20万の岩手県の県庁所在地。市内を北上川の支流中津川の清流が貫流している古都で、椹野川のある山口と似通っている。
山口に詩人中原中也が生まれたように、盛岡は石川啄木の町でもある。
不来方のお城のあと
の草に臥て空に吸は
れし十五のこころ
旧制盛岡中学時代の啄木は、不来方城と呼ばれた南部藩の盛岡城址をよく散歩し、数学嫌いの彼は文学書に読みふけるひとときを持った。
啄木が詩や歌に情熱を傾けたのは18歳から26歳で病没するまでの短い青春に過ぎない。「一握の砂」「悲しき玩具」に収録された歌は、主に生活的でそれに叙情的な視点をからませている。
“やわらかに柳青める北上の岸辺”や“ふるさとの山に向いて言うことなし”と岩手山に対した啄木には、川風が吹き城下町の匂いが漂う盛岡を忘却の果てにおくことはできなかった。
中也がさやかに風の吹く故郷を忘れ得なかったように。 (鱧)
以前4月の中旬に盛岡を訪れたとき、めずらしいサクラを見たことがある。石割桜と呼ぶ盛岡地方裁判所の前庭にあるサクラだ。巨大な花崗岩の割れ目に成育したエドヒガンザクラで、直径1.3㍍樹齢約300年の大樹はゆるぎなく満開の花姿を見せていた。
盛岡市は人口約20万の岩手県の県庁所在地。市内を北上川の支流中津川の清流が貫流している古都で、椹野川のある山口と似通っている。
山口に詩人中原中也が生まれたように、盛岡は石川啄木の町でもある。
不来方のお城のあと
の草に臥て空に吸は
れし十五のこころ
旧制盛岡中学時代の啄木は、不来方城と呼ばれた南部藩の盛岡城址をよく散歩し、数学嫌いの彼は文学書に読みふけるひとときを持った。
啄木が詩や歌に情熱を傾けたのは18歳から26歳で病没するまでの短い青春に過ぎない。「一握の砂」「悲しき玩具」に収録された歌は、主に生活的でそれに叙情的な視点をからませている。
“やわらかに柳青める北上の岸辺”や“ふるさとの山に向いて言うことなし”と岩手山に対した啄木には、川風が吹き城下町の匂いが漂う盛岡を忘却の果てにおくことはできなかった。
中也がさやかに風の吹く故郷を忘れ得なかったように。 (鱧)
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
│札の辻