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2007年05月20日

札の辻・21

 北九州市立文学館で開かれた「作家の自筆原稿でたどる文学・青春展」を見た。
 大岡昇平「武蔵野夫人」、太宰治「人間失格」それに三好達治・中原中也など作家、詩人75人の色褪せた原稿用紙に書かれた文字には、各々の時代と個性があぶり出されており惹きつけられた。
 堀辰雄と五木寛之の字は丸味を帯びた活字体に近く、中上健次の「岬」と村上龍の「限りなく透明に近いブルー」は原稿用紙の枠からはみでるほど筆致に迫力がある。
 高樹のぶ子「光抱く友よ」は題字に「早春」の2字が消されているのは思春期を模索した戸惑いからか、山田詠美「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」の原稿には彼女の漫画家時代が匂ってきた。
 ともあれ展示された原稿は小林多喜二より藤野千夜までいずれも若い時の作品である。
 この企画展の解説に「青春は夢と彷徨の季節である。未熟な魂が自らを錯覚し愛に溺れ、失意と挫折をくりかえすが、また人生において精神の最も眩しく輝かしく高揚する時期でもある」と。
 中原中也のはノートに書いた詩「春の日の夕暮」の一節で、

 トタンがセンベイを
 喰べて、春の日の夕
 暮は穏かです

と、また愛人長谷川泰子へ出した手紙もあった。
 ワープロやパソコンでは感じられない原画をそこに見る。    (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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