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2008年04月12日

札の辻・21

 東京や静岡はサクラ前線満開の報道が早くあったが、山口では三月末から春しぐれがあるなど開花が遅れた。

 「ちまきや」で岩本拓郎夫妻の里帰り展を4月1日の最終日に観る。
 故郷のサクラを原点におくイメージで30年余りを「満開のサクラシリーズ」で描き続ける力作70点は、いずれも画面いっぱいに躍る花びらと、日本のサクラの持つ静謐さが溶け合っており、次々と並ぶ作品に与謝野晶子の歌集「みだれ髪」の中の一首が重なった。

 清水へ祇園をよぎる
 桜月夜こよひ逢う人
 みなうつくしき

 画風に王朝美があるかと思えば、大宇宙を感じさせる空間にサクラ模様が張りついている。
 KOYO(紅葉)では抑える技法で朱色に落ち着きを見せた三井寺と、毅然とした朱色で寺の景観を表現した石山寺の2点が際立っていたと思う。
 片岡文雄の詩に「さくら」がある。

 さくらは天に向って
 散っていく
 世界はひとつの
 網膜で 花びらの
 ひとつひとつは
 そのぬるむ世界の
 はてなさを
 おののくのだ

 紀久子夫人の画は別に個展で観賞したい。粋と和の近代美が線と色彩の調和で形成されていたから。ともあれ、サクラの画が詩となり詩が画となる画展だった。

(鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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