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2008年08月16日

札の辻・21

 中原中也記念館の特別企画=「歴程」と中原中也=で、福島県いわき市にある草野心平記念文学館の学芸員小野浩氏が「草野心平と蛙の詩」について講演した。
 「歴程」は1935(昭和10)年に宮澤賢治、中原中也、草野心平らにより創刊された同人誌で、詩人たちの個性をむき出しにする人間対人間の詩精神で結ばれ、戦前戦後を通じ500号を超えてつづく。
 同郷のせいか草野心平氏によく似た風貌の小野氏は、心平詩集の「第百階級」「第四の蛙」など中心に、心平の中国大陸時代の生活や阿武隈山系南麓に位置する郷里小川村によせる人間心平の心象風景を重くおもしろく語った。
 そして戦後、東京小石川に開店した心平酒場「火の車」に集う人間模様や、鮭の頭を料理する心平流の価値観設定にまで話は及ぶ。
 「火の車」には私の若い頃の思い出もある。
 詩人山之口獏氏らとよく通い、心平メニューの(天)特級酒、(耳)一級酒、(鬼)焼酎、(麦)ビールを飲んだ。
 その頃心平氏に、なぜ「蛙」なのかと聞いた。すると氏は「土だ。人間もすべての動植物は土と水で生きている。その現実を蛙は小さい命を大きい声で百万年も唄い続ける地球の証なのだ」と言った。
 草野心平には風土が、中原中也には故郷が、ふたりの詩魂にはそれぞれのふるさとが埋蔵されている。        (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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