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2008年11月15日

札の辻・21

 岩国出身の文芸評論家河上徹太郎は友人小林秀雄を伴い帰岩したとき、夕食に蓮根煮しめを出すと舌のうるさい小林が「これが蓮というものだ!」と大声をあげたと随想にある。やはり岩国出身の宇野千代も蓮根のキンピラを好み彼女の自慢料理のひとつだった。
 その岩国で先頃中国産蓮根を岩国産だと偽称した業者のあったことは残念である。
 蓮根はインドから中国にかけてが原産地で、日本では1951(昭和26)年に大賀一郎博士により千葉県検見川の泥炭層の中から約2千年前の蓮の種子が発見され、大賀ハスまたは万葉ハスと呼ばれて日本各地に分布されるようになった。
 大体蓮根の栽培が本格化したのは明治以後だが戦後は工場用地や宅地造成で減産し、現在では徳島、福岡、佐賀、茨城、千葉、山口、熊本等が主産地とされている。
 以前、中国旅行中に上海で新聞社の友人がデパートで蓮の実の缶詰を見つけ、ホテルの部屋でビールのつまみにしたが栗に似てうまかった。
 蓮根の穴に辛子ミソをつめた辛子蓮根は熊本の味覚で知られているが、由来は藩主細川家の家紋九曜星と蓮根の穴の9に通じるからだという。岩国の藩主吉川家の家紋もまた九曜星なのだ。
 京都西木屋町に蓮根料理の老舗「れんこんや」があり、山口にも早間田に「蓮根」がある。
 百鬼園こと作家内田百けんは「蓮根は穴がうまい」と言った。
        (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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