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2009年05月16日

札の辻・21

 「前略、私は1年ぶりの窯焚きをします。窯焚きには命をかけるという言葉を使いますが近頃本当の意味が解ってきました。昨日咲いた朝顔は今日は咲かない月は満ちて欠ける-体力の限界を感じながらいま木葉天目に夢をかけています。窯出しを見にきて下さい。
 大道長沢湖畔
      原田隆峰」
とした案内状が到来し久しぶりに友人を誘って長沢窯を訪ねる。
 茶陶、花器など数多くの作品の中に十数年に及ぶ研鑽の日月を重ねて到達したと隆峰氏の語る-木ノ葉天目茶碗-が目にとまる。
 天目茶碗とは鉄色の釉薬茶碗で中国は宋の時代に吉安天目や河南天目がある。鎌倉時代に中国淅江省天目山の寺で修行した留学僧が茶碗を持ち帰って天目と呼称するようになったという。
 木ノ葉天目は江西省吉安の窯にて焼成され、茶碗の内底に実物の木の葉を貼りつけ、釉薬の二重掛けで葉の実形を巧みに焼き現したものだ。
 隆峰作もやや浅くて開き気味な天目型茶碗のもつ黒褐色をした地肌に、木の葉の葉脈まで鮮明に浮き出させ、造形美とは異なった象形美を感じる力作であった。
 吉安は長江支流河畔の古都である。「旅にしあれば椎の葉に盛る」の古事を思い出し大陸からの史的木ノ葉便だと思った。
 長沢池近くの窯は孟宗竹と活葉樹林の新緑に包まれ夏ウグイスのさえずりがしきりである。(鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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