2009年12月19日
札の辻・21
往年の作家火野葦平に河童会議という随筆集がある。その中に現鳩山総理の祖父で当時の鳩山一郎総理と、NHKで新春対談したときの感想が書かれていた。
=鳩山さんはニュースで見たとおり柔和な人柄で言葉もおだやかだった。いかにもお坊ちゃんらしく私たちが政治家に感じるどきつさやいやらしさもなかった。そのかわり迫力も感じられなく薫子夫人がつきそっていて、ときどき鳩山さんの話を補足した。
四方からライトがあてられ私は少し気おくれもした。私は国民として政治と選挙の粛正をしてもらいたいことや税金を安くしてと述べた。現在の政治家は選良でなく選悪だともいった。
鳩山さんは、政治家は相当よくなっているはずだと答え、それから税金も安くなっていると言いながら奥さんの顔を見た。そこで私が安くなっているどころか高くなっていますと言うと、薫子夫人が「主人は昔から財布を自分で持ったことがないのですよ」と笑った。
財布を自分で持ったことがないというのは、自分で銭に手をふれたことがないという意味らしかった。私はうらやましいと思ったが、日夜銭のことで四苦八苦している国民の政治をする総理大臣が銭にさわったことがないとはいかなるお伽ばなしなのだろうかと小首をひねった。=
この随筆から45年、祖父と孫の顔が重なってくる師走である。(鱧)
=鳩山さんはニュースで見たとおり柔和な人柄で言葉もおだやかだった。いかにもお坊ちゃんらしく私たちが政治家に感じるどきつさやいやらしさもなかった。そのかわり迫力も感じられなく薫子夫人がつきそっていて、ときどき鳩山さんの話を補足した。
四方からライトがあてられ私は少し気おくれもした。私は国民として政治と選挙の粛正をしてもらいたいことや税金を安くしてと述べた。現在の政治家は選良でなく選悪だともいった。
鳩山さんは、政治家は相当よくなっているはずだと答え、それから税金も安くなっていると言いながら奥さんの顔を見た。そこで私が安くなっているどころか高くなっていますと言うと、薫子夫人が「主人は昔から財布を自分で持ったことがないのですよ」と笑った。
財布を自分で持ったことがないというのは、自分で銭に手をふれたことがないという意味らしかった。私はうらやましいと思ったが、日夜銭のことで四苦八苦している国民の政治をする総理大臣が銭にさわったことがないとはいかなるお伽ばなしなのだろうかと小首をひねった。=
この随筆から45年、祖父と孫の顔が重なってくる師走である。(鱧)
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
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