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2010年01月09日

札の辻・21

 青い波頭の寄せる下田沖のプロローグから、近代日本の指針となった松陰・吉田寅次郎の創作ミュージカル「SHOWIN」=若き志士たち=を旧臘23日山口市民会館で観た。
 踏海の松陰ではじまり幼少年期、野山獄、松陰と婦人、松下村塾と若き志士たち、松陰と高杉晋作、そして飛耳長目から松陰の刑死に至るまで、構成がしっかりしており2時間に及ぶ熱演に満員の観客席を立つ人はいなかった。
 高杉晋作や久坂玄瑞を絡めた松下村塾にはあの大江健三郎の「師弟の風景」を思い出した。
 「松陰は萩という郷土を愛し、そこに生れる愛郷心が松陰のナショナリズムではないか。郷党ということばがある。萩と呼ぶ土地へ育った若い人たちへの愛情が湧き一緒にやっていこうとは、『坂の上の雲』の子規と同じく弟子に対し熱情をこめて相対する」と。
 また、野山獄では武家社会にあっても松陰が抽象像としての女性感を女囚ひさに抱く情緒が俳句を通して交流し、ひさ女にも幕末期の新しい女性像が漂っていた。
 飛耳長目。耳を遠きに目を長くして情報をかきあつめ、透明で科学的な洞察力を養い、しかも心情的に優しさをもって、国際認識、現状把握を極めようとする吉田寅次郎の若い生涯が鮮やかに浮彫にされた。
 蛇足をつければ下田の吉田松陰は踏海でなく踏晦である。(鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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