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2010年04月03日

札の辻・21

 ことしの彼岸も墓参のため旧熊毛町へ友人の車に便乗して帰省した。
 防府から椿峠を越え周南市に入ると、山陽自動車道沿いに植栽されたコブシが、白い気品のある花を枝いっぱいにつけているのが目立ち、周辺の山並みが山眠るの季語から山笑うへと芽吹きの気配を見せ、落葉樹林を背景にした光景は例年の墓参を楽しくしてくれる。
 従来春の花といえばサクラを指す場合が多く、花見、花時、花衣、花曇、花吹雪、花冷えなどの語句もある。
 しかし古くから日本人はサクラだけを花としたのでもない。万葉集も後期には中国文化の影響をうけ、花を観賞するおもむきも歌の上に現われ、サクラよりもむしろウメやモモの花が登場するようになる。
 コブシはモクレン科だがモクレンとは花の色が異なり、3枚の小さな萼片と6枚の大きな花弁にかこまれて、多数の雄しべと雌しべのあることはよく似ている。コブシは歌謡曲の「北国の春」にも歌われているが、日本列島の比較的低山地帯にある雑木林の中に自生し高山地帯の山深いところでは、コブシによく似たタムシバ(ニオイコブシ)の方が多く、かつて作家堀辰雄に木曽路を旅して「辛夷の花」という作品があるが、木曽地方ではコブシではなくタムシバだけという。
 いずれにしてもコブシ、タムシバ、ホオノキの白い花は行く春の句読点となっている。(鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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