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2010年07月03日

札の辻・21

 なが雨や
 銀の帯ひく蝸牛 風天

 雨のつづく梅雨どきによく見かけるカタツムリを詠んだ句で風天とはフーテンの寅こと渥美清の俳号である。この句は写生と心情が混然としており面白い。
 先週テレビで往年の映画「男はつらいよ・柴又慕情」を見た。
 寅さんアテ外れの恋人役吉永小百合は若くて輝いていたが、渥美清も脇を固める松村達雄、三崎千恵子、宮口精二らはすでに亡く、とくに吉永の父親役宮口精二のくわえ煙草姿には黒沢映画「七人の侍」における重厚な演技が浮かぶ。
 くわえ煙草といえば、渥美清と友人のヘビースモーカー小沢昭一は句会で「酒で死んだヤツは多いがタバコで死んだヤツはいない。俳句で寅次郎は生かされても渥美清は出てこない」と言いながらプカプカ吸ったという。渥美清昭和3年生まれ、小沢昭一4年生まれである。
 この世代は1ダンスができない2英語がしゃべれない3出された料理は全部食べる4仕事だけが生きがい―とある評論家の言葉に対し、作家城山三郎は同世代を代表し「ひとりで生きる。自分のものを持っている」と答えた。
 時代は異なっても風天は山頭火に惹かれて次の句を残す。
 
 赤トンボじっとした
 まま明日どうする
        (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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