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2011年02月26日

札の辻・21

 雪模様の先日、ヤマメの渓流釣りをした友人が、残雪の川岸に頭をのぞかせてきたばかりの小さなフキノトウを数個届けてくれた。包葉に固く抱かれた蕾だが、焼くと香りが強く早春の季節感をつげる渓流便であった。
 亡くなった作家立松和平は、“釣りと旅”の随筆で北の辺境がもつ魅力は、人も動植物も四季折々の色彩に正直に染められていくところにある。自然と向き合う折目正しい人々が暮らす北上川の雪空の下で、ウグイ(ハヤ)はすでに川底で婚姻色だと感動する。
 また秋田農文協だよりには次の一節もある。
―残雪がやせる頃、土の中からバッキャ(フキノトウ)が頭を出すさまは春の息吹きを伝えて人々を浮き立たせる。そのバッキャを摘むのは子供たちで、雪の中に淡い緑をいち早く見つけるのがうれしいからである。
 とりたてのバッキャは米のとぎ汁でさっとゆでる。それを水にさらして水を切り酢ミソであえる。少しばかりのほろ苦さがある味覚は新鮮で、雪の残る山国の春は子供の声と共に訪れる―と。
 山口の自然派山頭火にも蕗のとうの句は多い。

 手土産にふきのとう
 二つ三つ

 ほろにがさもふるさ
 との蕗のとう
 釣友持参のフキノトウに仁保川源流渓谷に見る早咲きのヤブツバキも思い出した。
        (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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