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2011年12月17日

札の辻・21

 日本列島の冬の気象は日本海側の雪空と太平洋側の冬晴れとに分かれる日が多い。山口県でも県北と瀬戸内側ではよく天気が分けられる。
 晩秋から冬へと移る山口盆地は山肌の彩りが豊かで、殊に師走は急な気象の変化できびしい気温の格差が感じられ落葉期の寂寥感すら伴う。
 瑠璃光寺五重塔は相輪の高さで冬空に風格を持ち、五層の屋根には重圧感も感じない。塔の背後は稜線のなだらかな山肌で、丈の低い雑木の中にある塔は奈良朝期の幾つかの塔に見られないさわやかな建造美がある。
 先日瑠璃光寺を訪れた在阪旅行メディアのひとりが、京都・奈良の五重塔には古代中国風を感じるが山口の塔には日本的な情緒があると言った。
 かつて毎日新聞学芸部記者だった作家井上靖氏は「塔とサクラ」の随想の中で=私は建築史家でも仏教史家でもないが、法隆寺、薬師寺、当麻寺、室生寺と時代を追って造られてきた塔が、異国の建造風を少しずつふっきってきて、初めてここに日本の塔としての完成を見せているとの印象を持った=と述べた。
 瑠璃光寺の門を入るとすぐ樹間から塔が見えてくる。池を回ると塔はすぐそこに大きく視野に入り、その塔をカメラに収めようとする人たちがあちこちで構えている。
 かつてこの塔を見た写真家の林忠彦氏が「山口の長い歴史が重ねられている」と髪をかき上げたことを思い出す。(鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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