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2012年03月31日

札の辻・21

 明日から4月である。キジバトが近くの電線で毎朝「デデッポッポー」と鳴いている。のどかなその声にうららかな春の旋律が生まれ、植物の発芽につづく開花前線も南から北へそして山麓から山頂へと伸びる。
 後河原、亀山公園だけでなく山口は町角や川筋にまでサクラ咲くの時期にめぐまれており、裏鳳翩の県道や、宮野奥の徳佐へ抜ける山道をたどると、満開の細枝に陽光を浴びたヤマザクラの一樹を見出すのも山口ならではの季節である。
 山口から津和野まで山口線沿いにも里桜あり山桜が目立つ。
 その津和野から山口までの通学経験を持ち山口高校から東京芸大出身の岩本拓郎氏の「さくら・桜・SAKURA2012」個展がいま井筒屋で開催中である。
 「桜、満開の桜、目の前にひろがり、私を包み込む桜。目をとじる。目の奥に浮かぶ桜、記憶の中にある桜、あの桜、あの時の桜。心で感じる桜。それは形ではない。不思議なひろがり―」とは今回の個展に寄せた氏のレポートの一節。
 数百年の星霜を越えてきた桜の老樹と共に一生を暮らした男を書いた水上勉の力作「桜守」を思い出す。丹波の山奥で生まれ京都で植木職人となり、一生を桜樹に託した男は琵琶湖の湖岸で見出した一本の桜にほれこみ、老骨を老桜の樹下にまでと守り続ける。
 画展の空間に万朶の花びらが匂う。(鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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