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2012年11月17日

札の辻・21

 直木賞作家古川薫氏の近著「志士の風雪・品川弥二郎の生涯」を読む。
 蛤門の変、戊辰戦争、そして西南戦争へと明治初期を遍歴しながら、吉田松陰ゆずりの士魂をもとに協同組合組織をわが国に定着させた品川弥二郎の実蹟を古川史観で裏打した力作である。
 古川氏によると、外国の戦争を見学して自国の将来に備えようとする戦線視察は早くから先進国では実施されていたが、日本人として普仏(ドイツとフランス)戦争を明治初年に視察したのは政府から派遣された品川弥二郎で一八七〇(明治3)年の維新胎動期にと驚く。明治も中期に至ると品川弥二郎はヨーロッパで行われている産業組合制度を日本にも興すことが得策であるが容易ではないと組合制度法案の国会提出を立案する。
 しかし弥二郎の組合設立の動きは、議会での法制化を待つまでもなく私的な信用組合として漸次姿を現していった。
 私が思う事は太平洋戦争が終結した1945(昭和20)年時代、農地改革によって日本の農業が地主支配から脱却して新しい自主農業へと移行する時期に、明治の農協制度の主張者品川弥二郎論が蘇ってきた事を。
 古川氏は幕府の強権力に歯をむく品川弥二郎は松陰の“やむにやまれぬ”の狂気以外ではあり得なかったとしなければ、-志士の風雪-という題名は生れなかったとあとがきにある。(鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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